排水口の悩み・・・
排水口のバスケットがヌルヌルしていて気持ち悪い、水を流すとゴミが浮いてくることも。網目についたカビが取れなくてタワシでガシガシ擦ったり、漂白剤に浸けたりするが、やはり取れない。
アイデアのヒント「引き算の発想」
開発担当の小坂井は排水口の悩みをかかえていた。なんとか排水口のバスケットにかかる不満を解消できないか。
普段から家事で面倒なことがあると「原因を根本から無くしてしまおう。」と考え、撤去することがあった。「排水口バスケットを無くせないか?」と考えてみた。
水切りネットをゴミ受けにして、最低限のフレームがついたホルダーにできないかと考える。最初は汚れがたまる壁を無くし、ネットを受け止める3本フレームの形状で考えてみた。早速3Dプリンターで試作、家で使ってみたら、やっぱりいい。
商品化に向けて苦難のスタート
製作した3D試作は30個強。水切りネットを受け止めつつ、汚れがつかない形状は?水の切れは?3本フレームだと、ネットが垂れすぎてしまい、排水口の底のカバーにベッタリ着いてしまう・・・。試行錯誤を重ねた結果、3本より垂れすぎない6本フレームで検討を進めることにした。 しかし製造上、様々な困難があり開発予算オーバー、販売価格も高くなり、開発中止に(涙)
諦めきれず再提案
小坂井は思った。
「アパートのゴミ受けを3Dプリンターモデルから、備え付けの樹脂製バスケットに戻して使ってたが、カビが広がってきて、やはりこれを使うのはどうしても嫌だ。」どんなカタチになろうと商品化したいと。
部内会議で需要の見込める資料を準備しプレゼンした。しかし反応は全くなく、水切りネットの存在すら知らないスタッフもいた(主に男性スタッフ)
終いには「じゃ、そろそろ時間なんで。」と会議を締められる。
あまりにも反応が悪かったため、同期の女性スタッフに相談し再度プレゼン資料づくり。「社内調査データがあった方がいい。」とアドバイスをもらう。
素材をステンレスと銅で見積りを進める中、社内から「抗菌作用のある銅が良いのでは」の声があがる。しかし、、、価格は5000円!
(この頃、新型コロナウイルスの感染拡大が報道され始めた時期)
一晩考え直す。「排水口のバスケットに5000円も出すのか?手軽な価格でたくさんの方の面倒を解決したい」
翌朝、出社直後「樹脂でいきたい!」と上司に相談。
樹脂にしたことで形状に自由度が増し、当初より「華がない」と言われてきたのでお花型にし、シンクが華やかになるカタチにまとめた。完成した試作品は汚れがつきにくく洗いやすい。ゴミをしっかり受け止めるのに水はけが良い理想のカタチになった。
部内会議に再々提案
排水口は新しいジャンルなので、店舗での売り方に部内で迷走と混乱が発生。特に男性陣は排水口の悩みを理解しにくい。話は平行線に、、、
「やめた方がよい!」と判断されかけたが同僚の女性スタッフの後押しもあり進めることになった。
都内店舗で売場調査を行った際の資料をまとめ承認会議へ。無事承認され、商品化が決定した。10ヶ月もの間、共感されない日々から開放された瞬間だった。
過去にも女性発案で男性から共感を得られなかった商品『ゆびさきトング』がある。発売後、女性から多くの支持を受け、100万本近く売る当社の看板商品となった。『排水口ネットホルダー』も市場からの共感を期待している。
製造メーカーインタビュー
- 御社の事業内容と強みをお聞かせください
- 池田:プラスチック製キッチン用品、家庭雑貨の製造販売を行ってます。 ウチの強みは企画からデザイン、設計、製造、梱包まで自社一貫生産できるところです。成型工場は24時間稼働していますが、社員の夜勤や交代勤務なく自動生産が行えます。急なニーズや需要にスピーディに対応することができます。
- みなさんそれぞれどのようなお仕事をなさっているかお聞かせください
- 乾:全ての金型の設計、製造を行ってます。クライアント様の要望に対してデザインの実現性や生産コスト、効率から的確なアドバイスもできると自負しています。
池田:「オークスさん!小坂井さん!このまんまは無理らろも、こうせばできるて!(このままは無理ですが、こうすれば出来ますよ:新潟弁)」ってアドバイスするんですよ(笑)
一同:(笑)
荒井:お客様からの受注、原材料や資材の発注、生産管理など幅広く担当させてもらってます。
池田:最近は特に小ロットが多いからね~。オークスさんも沢山在庫かかえたくないでしょ?(笑)
小坂井:いつも無理を言ってスミマセン。
一同:(笑)
- 仕事で難しいところ、気を使うところはどこですか?
- 池田:クライアントの要望をそのままじゃなくて、生産効率だったり、コストだったりを十分加味して商品本体からパッケージまで経験やアイデア、知恵を出してアドバイス、カタチにしていきます。
小坂井:どんな素材や構造にすれば、デザイン、機能が実現できるのか、相談させてもらってます。曙産業さんは商品化のスピードもすごく速いです!
乾:樹脂といっても数え切れないくらいの種類や特徴、そして同じ材質でもグレードが沢山あります。
小坂井:食洗機対応とか、抗菌樹脂とか。
池田:ネットホルダーは最初、抗菌剤入りの要望をもらったんだけど、クリンベル®(撥水性が高い防汚剤、表面改質剤)の方が、この商品の性質上、より良いと提案させてもらったんだよね。
- この商品の製造依頼が来た時、どう思われましたか?
- 池田:最初はね~、この商品の価値が分かりませんでした。
後に試作品をもらったんだよね~。それで娘にも「ちょっと使ってみてよ。」って渡したんだよね。
そしたら想像以上の大絶賛!!「こういうの欲しかった!今まで無かった!」って。
今まで使っていた排水口バスケットは水はけが悪く水が溢れてきて気持ち悪い。バスケットには細かい穴が沢山空いているんだけど、そこにびっしりとカビがこびりついて掃除がすごく大変。何かいい物がないかといつも思ってたと。「これはゴミはしっかりたまるけれど、水はしっかり抜ける。掃除もかんたん。」 娘が今までのバスケットをゴミ箱にポイッ!直ぐに捨てちゃった。娘の旦那の目が点!(笑)
乾:ウチは三角コーナーなくなりました。直ぐ排水口が詰まって水が上がってきちゃうのがイヤだったんで大きいゴミは三角コーナーに入れて、あんまり流さないようにしてたんですよ。でもこれはゴミがたまっても水の抜けがいいんですよ!三角コーナーをなくしてシンクも広くなりました。あとはこの商品、シンプルに見えて高い技術と手間がかかってます。わかる人にはわかります!
荒井:私のところは、キッチンは奥さんの聖域なので、触れられません(笑)
- 曙さんとオークスのタッグ、大ヒットといえば、累計販売45万個の「パコンとしまるごみ袋ホルダー」がありますが、 これも小坂井のデザインした商品。同じシンクの悩み解消グッズということで期待が高まりますが、手ごたえはいかがですか?
- 池田:「パコンとしまるごみ袋ホルダー」は発売から一年くらいは特にすごかったよね~。24時間工場を動かしても生産が需要に追いつかない。採算度外視で金型、ラインを増やしたんだよね。急な増産に対応できたのも一貫生産のウチの強みだよね。
また娘の話なんだけど、「ピンクがいいね、かわいいね」って。私はグレーとかモノトーンのなるべく目立たない色がいいんじゃないかなと思ってたんだけど、そこが女性や主婦が喜ぶのかな~。
小坂井:テンションが上がらない場所だからこそ、ちょっと華やかな色、デザインにこだわりました。
一同:(深く)うなずく
本日は皆さんお忙しい中、ありがとうございました!
開発担当プロフィール
開発部
商品開発課
小坂井 里美
2007年 オークス株式会社入社
2011年 レイエブランド立ち上げメンバー
ゆびさきトング、はちみつスプーンなどレイエ商品の数々の企画設計デザインを手掛ける。日常の悩みを解決するためのアイデアを常に考えている。