COLUMN

コラム

"水をキレイ"でお花の美しさが続く花器「ウォーターキープベース」開発秘話 ~ 前編:研究編

2023.07.14 コラム

生けながら、お水をキレイに。お花の美しさキープ

ちょっと不思議で、魔法のような(抗菌機能付き)花器「ウォーターキープベース」が2年もの試行錯誤の開発期間を経て誕生しました。

2023年6月にクラウドファンディングサイト「Makuake」でプロジェクト開始以来、多くの方から好評いただいています!

column_water-keep-vase_story_0020.jpg

「大切な人から贈られたお花を少しでも長く、キレイなまま飾りたい」

このアイテムは、開発者である小坂井里美さんのそんな想いから生まれました。

社内きっての「お悩み解決のプロ」であるアイデアパーソンの小坂井さん。今回は前編、「ウォーターキープベース」開発のきっかけから誕生の秘話までをご紹介します。

「大切なお花を長持ちさせたい!」が開発のきっかけ

column_water-keep-vase_story_0031.jpg

ある日、小坂井さんは、同期のKさんが、旦那さんから毎年誕生日にブーケを贈ってもらっていると聞きました。

「うらやましい! 私ももらってみたい...。」

column_water-keep-vase_story_0032.jpg

旦那さんから花束をもらったことがない彼女は勇気を出して、旦那さんに「私も花束をもらってみたいんだけど...。」とお願いしました。

column_water-keep-vase_story_0033.jpg

すると、結婚記念日に大きな花束をもらうことができたのです!

大切な人にもらった大事なお花。さまざまな容器に、うれしい気持ちで生けて鑑賞していました。

column_water-keep-vase_story_0034.jpg

ところが、その時は猛暑で連日部屋の温度は30℃以上に!水はすぐに濁り、茎はぬめってしまいました。すぐに枯れてしまったお花もありました。

「せっかく旦那さんがプレゼントしてくれたお花。なるべく長持ちさせたい...」

日中、エアコンをつけて出社した日もありましたが、「電気代がもったいない。どうにかならないか...」と思ったことが開発のきっかけでした。

「抗菌性のある花瓶とは」とは。商品化へのヒントとアイデア

column_water-keep-vase_story_0110.jpg

キッチンの排水口やゴミ受けにアルミホイルを丸めて入れておくと、ぬめりが軽減されることは知られています。

column_water-keep-vase_story_0120.jpg

そこで小坂井さんはコップにアルミホイルをうずまき状に丸めて入れ、すきまにお花を生けてみました。すると、水のぬめりが抑えられ、お花が長持ちしたように思いました。
(この時すでに抗菌性に加え、花留めの機能も持たせようとしていたそうです。さすがです!)

夏場の室温の高さでお花が持たないことに困っている人は多いのではないか?と思い、新製品として研究しようとアイデア会議で提案、初めての商品ジャンルでしたが開発を進めることとなりました。

コロナ禍やお花のサブスク人気も開発の後押しに!

column_water-keep-vase_story_0080.jpg

最近は定期的にポストにお花を届けてくれるサービス「お花のサブスク」の市場が急成長しています。フラワーショップで手軽に買えるミニブーケも人気ですね。

column_water-keep-vase_story_0070.jpg

また、コロナ禍でテレワークが普及し、おうちで手軽にお花を楽しみたい人が増えました。

ところが一般的な花瓶は大きすぎて、そんな手軽なサイズのブーケ丈にちょうどいい花瓶は、あまりありません。

切り花が日持ちしない原因は、雑菌の繁殖

小坂井さんは切り花の専門書を読み漁りました。
分かったことは、早く枯れてしまう原因のひとつは水の雑菌の増殖でした。

column_water-keep-vase_story_0140.jpg

お花を生けていると、だんだん水がぬめってきます。このぬめりの正体は雑菌で、茎の導管を詰まらせて、お花が水を吸えなくなります。すると、お花の水分量が減り、しおれてしまいます。室温が高く、雑菌が繁殖しやすい夏場は、特に日持ちしない傾向があります。

水を抗菌することは、お花の状態を保つ上で効果的だということがわかりました。

「ほどよい抗菌性と、その実証」に苦労した、研究開発の日々

アルミホイルを入れた時のように、水を抗菌することは効果的だったのです。

商品化するためにはそれ(抗菌性による花保ち効果)を実証しなければいけません。

ステンレス製のワイヤー形状で花を支え、表面に施しためっきで水を抗菌する仕様で試作し、実験することにしました。

ここからが苦労の連続でした...

column_water-keep-vase_story_0150.jpg

花も菌も生き物。
花の種類や品種によって寿命は異なり、個体差もあります。
室温や湿度等、環境によっても大きく変化。
実験結果の要因を特定することは容易ではありません。

小坂井:「こうなったのは、こういう理由かもしれないけど、そうじゃないかもしれません。」
部長:「・・・結局、どうするの?」
開発前半は、こんなやり取りばかり。

仮説を立てて検証を繰り返すも、工業製品ではないため、検証が難しいことを痛感します。

少しでも試験環境を一定にするため、ついには社内の倉庫内に実験用の温室まで設置しました。

column_water-keep-vase_story_0155.jpg
《倉庫内に設営した温室と、実験中の様子》

こたえは「銀めっき」にあった!

めっきの金属の種類や、めっき面積比較のため、ワイヤーの側面の本数や太さをさまざまなパターンで試作、検証しました。

column_water-keep-vase_story_0170.jpg
《めっき別 経過テスト》 ※5日経過後の様子

accelerated_test_800.gif
《抗菌ホルダー(銀めっき仕様) 経過テスト》 ※温室内3日間の変化を定点観察
左:銀めっきなし/右:銀めっきあり

「銀めっき」は抗菌性に優れ、他のめっきと比べ、花保ちに優れていました。

 

column_water-keep-vase_story_0180.jpg

試行錯誤、現在の形状や「銀めっき」仕様にたどり着くまでに1年半もの月日を費やしました。

さいごに

column_water-keep-vase_story_0270.jpg

山あり谷あり、必見の開発ストーリーはインタビュー時間を大幅にオーバー!

次回、後編ではこだわりのデザインについてご紹介します。お楽しみに!

関連コラム